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幸せな悩み

以前に長男が小学校の卒業式に着たスーツをタンスから引っ張り出し、ぼんやりと眺めている。
どうしようかな と思いながら眺めている。
身長が合わないのだ。
あと二か月足らずで、次男も卒業式だ。
どうせ一度しか着る予定はないんだし、なんとか体に合うようにお直しして使うか。
でもせっかくの晴れの日に間に合わせの服というのもねぇ…
心の中のつぶやきは、さっきからずっと同じところを行ったり来たり。
考えがまとまらないまま、ただ目は人形のように吊り下げられた服を見ている。
 ぼくはただ見てる
 それをただ見つめてる
 鬼たちも笑う
 それをただ見つめている

PCの中の星野源が歌う。
私はチョコレートを一粒口に放り込み、なおもその黒の三つ揃えを見つめ、黙って鬼に笑われている。

そこへ当の次男が帰宅したので、私はおもむろに上着をハンガーから外し、スウェットパーカーの上から軽くはおらせてみる。
うん、袖、長い。
着丈も、長い。
でも思ったよりもぶかぶかではなかった。
「これでいいよ」と次男は言う。
そうだねっていう気になる。

このところ、私の気分は混沌としている。
実はこの年末年始を挟んで、父が入院していた。
さほど心配な病状ではなく、すでに退院もしている。
ただ、その間家に一人で過ごしていた母のことが気になった。
母は元来よく気が回り、明るくよくしゃべる人である。
そして、父の入院している間、母は普段にも増して饒舌で、忙しく過ごしているようだった。
電話をしても、会いに行っても、母はとても元気だった。
そんな母に接し、私は安心すると同時に少し心配になった。
母は意識下にも不安や寂しさと戦っている、そんな臨戦態勢にあるのではなかろうか。
父が退院し、いつもの日常が戻っても、時が後戻りするわけではない。
父も母も老いていく。
そう思うと、なんとも切ない思いがこみ上げる。

朝ドラ『べっぴんさん』で、江波杏子扮するジャズ喫茶の女主人が言っていた。
まさかこうして一人で生きていくことになるなんて。
女の一生なんて、分からないものだと。
人生を語るのに男も女もないと思うが、そんなセリフがやけにずっしりと響いてくる。
もし私が突然天涯孤独の身になったら。
脈絡もない空想の中で思う。
電球が切れても交換の仕方すらおぼつかない私が、一人で生きていくなんてできるんだろうか。
自分自身の不甲斐なさに打ちのめされながらも、改めて目の前のスーツを見やる。
本当に、子どもの卒業式の服のことで悩むことくらい幸せな悩みはないんだと思う。

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コメント

こんばんは。
横浜のウチの辺りですと、最近は、進学する中学の制服(スーツ)を小学校の卒業式に着てくる子がほとんどです。ウチもそうでした。happy01

投稿: 猫畑猫麻呂 | 2017年1月26日 (木) 22時20分

猫畑さん、猫麻呂というお名前だったんですか!(笑)
コメントありがとうございます。
卒業式に中学の制服を着るのは、無駄な出費もなくいいですよね。
うちのほうもそうなればいいのにって思っていましたが、残念ながらこちらでは制服を着る子はほとんどいないんです。
スーツなんてほぼ着ることもないのに、でも着せてやりたい親心。
複雑です(^_^;)

投稿: さぼてんの花 | 2017年1月28日 (土) 23時11分

我が家は息子3人。
小学校の入学式は
私の両親が買ってくれたスーツを
3人とも着ました。
さすがに3人目の時はデザインが古臭い。
ちょっと可哀そうだったな~coldsweats01
でも気にしているのは私のみ。
本人は全然気にしてませんでしたよ!
サイズが小さいならまだしも
大きいのなら詰めれば着れます!
大丈夫大丈夫!!

私もね、時々思いますよ。
独りぼっちになった自分。
その時、私は強く生きていけるだろうか・・・。
孤独に耐えられるだろうか。
でも人間は結局は一人で生きていかなきゃいけない。
死ぬ時もそう。
死と対峙するのは己のみ。
だれも助けちゃくれない。
なんてねcoldsweats01
でもね、こういう時
モーツアルトのAve Verum Corpusを聴くと
涙出ちゃうんだな、私。
ごめんなさい、宗教の勧誘でもなんでもないのよ!
歌詞がね、辛い死(孤独)と向き合う時
神様どうか一緒にいてください・・・っていうね
今も昔も人間は孤独と闘っているんじゃないかってね
思うわけよthink
心の支えみたいなものが必要なんだよね。
老いも誰にでも訪れるもの。
そのときに、支えになるものが
自分にちゃんとあるといいな・・・なんて
ブログを読ませていただいて思いました。
話が飛躍しすぎたね、
長文失礼しましたsweat01sweat01

投稿: mitsumiya | 2017年1月29日 (日) 11時20分

mitsumiyaさん、胸に迫るコメント、ありがとうございます。
何度も読み返していました。
そうか、人間にとって孤独は永遠のテーマなんだ…
だから支えがほしいし、他者とのつながりに依存していたくなるんだ…
無教養なのでモーツァルトは聞こえてきませんでしたが、
mitsumiyaさんの心の叫びがズンッと響いて来ましたよ~
先のことはわからないですけど、
どんなときでもちゃんと自分の足で立っていられるように、
自分の人生を最後まで自分で受けとめていけるように、
年を重ねていきたいものです。

投稿: さぼてんの花 | 2017年1月30日 (月) 23時10分

さぼてんの花さん、こんにちはnote

さぼてんの花さんが感じておられてる思い、
私もとてもよくわかります。
私には子供がいないので、一人の老後のことも時々考えます。
そして、こんなふうに思います。
人は孤独を感じる時こそ、一人ではないことを知って、
その逆の時には、本質的には人間は孤独であることを
意識しなければならないんじゃないかな、と。
ややこしい表現でごめんなさい。
けれど、どんな形であれ、精一杯生き抜く人生には、
常に希望があるものと信じています。
息子さんの卒業式が、思い出に残るいいものになりますようにshine

投稿: hanano | 2017年2月 5日 (日) 12時36分

hananoさん、こんにちは(^^)

人生って、結局は自分に与えられた時間をどう生きるかってことで、だれに代わってもらうこともできないもの。
本質的に人はみんな孤独な存在なのでしょうね。
だからこそ、孤独を抱える者同士、寄り添っていたい気持ちも生まれて…
だれかと時間を共有することの意義もきっと大きいのでしょう。

卒業式、楽しみです。泣くかな…?(´艸`*)

投稿: さぼてんの花 | 2017年2月 7日 (火) 16時38分

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