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年賀状の思い出

今でこそ珍しくなくなった写真入りの年賀状。
今年も親戚や友人たちから、家族の笑顔満載の、幸せ色のハガキが届いた。
今はちょっとPCを使えば、簡単にオリジナルの年賀状が作れるし、写真を取り込むのだって、カラー印刷だって、楽々だ。
特別なスキルなど持ち合わせていない私にだってやれるのだから、ほんと便利になったものだ。
でも、昔はそうはいかなかったわねぇ と子ども時代が懐かしく思い出される。

私の幼少期であるから、昭和40年代から50年代ごろの話である。
当時、よそからいただく年賀状には写真入りなど皆無であった。
そんな時代に、なぜか我が家の年賀状は、家族写真だったのだ。
その写真は、父が撮影し現像し焼き付けた、いわゆる白黒の銀塩写真で、文字通り一枚一枚手作りの年賀状だったと言える。
思えば、年賀状作りは我が家にとって年末恒例の一大行事となっていた。

その晩は、早めに夕食を済ませると、みんなよそ行きの服に着替えて身支度。
壁には兄や私の書き初めが張られ、それを背景に写真撮影である。
三脚に取り付けたカメラと私たちが並ぶ位置を父が忙しく何度も行ったり来たりして撮影が終わると、すぐにフィルムの現像が始まる。
「いいか~?電気消すぞ!」という父の声に、急いで元の服に着替える私たち。
手狭なマンション住まいゆえ、家中の電気をすべて消して、視界は真っ暗に。
ダイニングのテーブルの上には写真の引き伸ばし機が設置されていて、現像後は直ちに焼き付けが行われる。
暗闇の中、つんとすっぱい現像液の匂いが漂う。
家がにわか暗室に早変わりするのだから、これが小さな子どもにとって、わくわくせずにいられるだろうか!
引き伸ばし機を通すと、フィルムに撮影した画像がハガキサイズに引き伸ばされて台の上に映る。
そこにセットされた印画紙の露光がすんだものをバットの中の現像液に浸すと、白い紙の上にゆっくりと画像が浮き出てくるのが、魔法のように思えてくる。
どんなにすばらしい写真ができているかと期待して見てみれば、
10枚以上撮ったのに、誰かが目をつぶっていたり、変な顔をしていたり、たった4人の家族がなかなか一つにまとまらない。
なんでいいのがひとつもないの?と毎年ここで思うけれど、
その中から一枚を選ばなければ仕方がない。
毎年何かを妥協して、ようやく使う写真を決めると、
あとは必要枚数の焼き付けだ。
部屋中に新聞紙を広げ、焼いた写真を重ならないように並べて乾かしていく。
子どもだった私が、暗闇につられてうとうとし始めるころまで、作業は続くのだった。

こうして作られた写真年賀状は、親戚やごく親しい人たちに届けられるのだが、少し大きくなってくると、以前は感じたわくわく感よりも、よその家とは異質な写真の年賀状を疎ましく思う気持ちが強くなった。
第一、こっぱずかしいじゃないか。
めったに会ったことのない親戚の人に会ったときも、
こちらが名乗るより先に
「花ちゃんね!いつも年賀状で見ているから知ってるわ」
などと言われることも多かった。
当時は珍しい写真の年賀状だったので、もらった人も強く記憶に残っていたのだろう。
ま、これはこれでむしろ好都合な場合もあるのだが、
それでも、こちらが知らない人に、自分の情報だけ伝わっているというのも、なんだかフェアじゃないような気がしていた私である。
そんなことも影響して(かどうかは定かでないが)、
私が中学生になったころまで続いたこの年賀状も、ついに作成されることはなくなったのだった。
写真の年賀状をやめた父の思いについて、私もこの年になって初めて、あれこれと想像を巡らしている。

その後、写真の年賀状を出す人が世間で増えて来ると、
うちって時代の先を行ってたってことじゃない?
なんて会話が実家では交わされる。
みんながやり始めるころにはやめちゃうなんて、
ほんと、時代に逆行している。
でもそれが、父らしいと言えば実に父らしいとも思えてくるのである。

 

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コメント

やぁ~素敵な思い出ですね。
あの時代に(なんか大昔に思える表現だなcoldsweats01)写真入りの年賀状だなんて。
家族の一大イベントですね。
わくわくするだろうなぁ~confident
でもだんだん大人になっていくにつれ。。。
終わりにした時のお父様の気持ち、私までちょっと考えちゃったcoldsweats01
あ~なんかドラマできちゃいそう。
素敵な思い出ありがとうございます。
クリスマス、大変でしたね。
次男くん回復されてよかったconfident
今頃すみません。
あ、ご無沙汰しておりますcoldsweats01
今年もよろしくお願いします。
さぼてんの花さんにとって楽しい一年になりますようにhappy01


投稿: ところん | 2016年1月 5日 (火) 23時50分

私の子供時代にも毎年賀状にご家族の写真を送ってくださる方がいらして、とても印象深かったのを覚えています。
さぼてんの花さんのお父様、素敵ですね。
ご家族の仲の良さが伝わってきました。
きっと写真年賀状を受け取った方達、皆さん楽しみにしていたと思いますよ~。

投稿: タッタ | 2016年1月 6日 (水) 00時05分

ところんさん、お久しぶり~happy01
こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
時間の推移っていろんな変化をもたらしますから、
あのころの年賀状作りのドタバタが
今はこんなに思い出深いものになるっていうのも
ちょっとした驚きです。
家族写真を撮ったりするのも、
ま、子どもが小さいうちだなー とか、
今の私自身がちょうどそんなことを思う時期に来ていて、
いろいろ感慨深いです。

あ、次男のご心配、ありがとうございます。
今はもう、頭に来るくらい元気ですよー(笑)

ところんさんにとっても、いい一年になりますようにshine

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 6日 (水) 16時21分

タッタさん、こんにちは(^^)
タッタさんのお知り合いにも、いらっしゃいましたか!
写真の年賀状の珍しい時代でしたよね~
え?素敵?父が?
いやいやいや!(笑)
なんてもったいないお言葉。
もうねー、何かにつけ、マニアックなんですよーsmile
そのおかげで、いろいろ面白いこともありましたけどconfident

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 6日 (水) 16時33分

小中学生の頃、年賀状は手書きでしたが、好きな娘へのそれはことさら丁寧に書いてましたな~。confident

投稿: 猫畑 | 2016年1月 6日 (水) 22時20分

写真が趣味と云う事もあり、長い間写真の年賀状を出し続けましたが、
心機一転、今年は年賀状を廃止しました。
メールやフェイスブックなどで、身内や親しい友との連絡は出来る時代。
これから寒中見舞いで返信し、止めた事を伝えようと思っています。

投稿: 岳 | 2016年1月 8日 (金) 08時02分

猫畑さん、こんにちは(^^)
おぉ!それは…shine
気持ちを伝えるのに、手書きに勝るものはありませんよね。

うちでも、写真のものと普通の年賀はがきに手書きしたものと使い分けていて、
私が友人に出すのは手書きでした。
プリントごっことかもやったなぁ。
懐かしい…confident

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 8日 (金) 14時30分

岳さん、こんにちは(^^)
あら、残念!
岳さんの写真なら、毎年楽しみになさっている方も
きっといらしたのではないでしょうか。
私もほしいくらいです~
なんて、図々しくてすみませんcoldsweats01
でも、たしかにSNSは便利ですし、
岳さんご自身のお考えもおありなんですよね。

うちの父は、写真が趣味というより、
どっちかっていうとカメラオタクなんです。
メカいじりが好きで。
それで家中、カメラだらけです(笑)

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 8日 (金) 14時42分

こんばんは
今でこそ、簡単にできる写真年賀状(私も最近はもっぱらこのタイプです)、まさしく現像から手作りで素敵ですね。
昔のフィルム写真は、現像するまではどう写ったかわからない上、フィルムや現像紙が高くて、シャッターを切るのが、物凄く決意のいる行為だったように思います。
それゆえ、プロのカメラマンとの差も歴然としていたような気がします。
そういったことを考えさせて頂ける素敵な記事を有難うございました。
ちなみの我が家の昔の年賀状は、父が指揮する多色刷りの版画印刷で、兄と私も簡単な一部の色を担当させられた記憶がありますが、父の他界とともになくなってしまいました。

投稿: Khaaw | 2016年1月 8日 (金) 21時28分

さぼてんの花さんの「年賀状の思い出」と皆様のコメントを楽しく、懐かしい気持ちで読ませていただきました。
 カメラといえば、小学生の頃の雑誌付録の針穴写真機から始まって、上から覗いて撮る箱型カメラ、初めて買ったオリンパス、子供の写真を撮ったペンタックスの一眼レフ、孫の写真を撮ったカシオのデジカメ、そして今年の賀状に入れた「妙高山と北陸新幹線」は更に進化したオリンパスのデジカメでした。オリンパスに始まってオリンパスで最後です。

投稿: | 2016年1月 9日 (土) 11時34分

Khaawさん、こんにちは(^^)
確かに、デジタルカメラの登場は
写真を撮るという行為を気軽で身近なものにしてくれましたよね。
撮った画像をすぐに確認できますし、補正だってできるんですから、こんなに便利なことってありません。
本当に画期的な進歩でしたねconfident
撮影済みのフィルムを写真屋さんに現像に出して仕上がりを待つのも、ちょっとした楽しみではありましたけど、
一度デジタル化してしまったら、もう昔のカメラに後戻りなんてできないわ~

Khaawさんのお宅では、家族で作る版画の年賀状だったんですね。
お父さま、毎年張り切っていらしたんだろうな。
Khaawさんにとっても、きっと大切な思い出なのでしょうね。

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 9日 (土) 15時21分

匿名さん、こんにちは(^^)
コメント、ありがとうございます。
カメラとともに歩んで来られた人生、ですねconfident
いろんな節目節目に、人はカメラを手に取るもの。
言わば、その写真には、撮る人のさまざまな思いが込められているわけですよね。
その一瞬を永遠に。
カメラって不思議なアイテムですね。

投稿: さぼてんの花 | 2016年1月 9日 (土) 15時29分

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