虫歯の思い出
前の記事にも書きましたが、子ども時代、物心ついたころには虫歯で歯医者さん通いをしていました。
混み合った歯科医院の待合室で大人たちの隙間にちょこんと座り、診察の順番を待っていたときのことが思い出されます。
逃げ出したいくらいいやなのに、逃げ出すわけにもいかない。
長時間待たされること自体が苦痛であるのに、その苦痛の向こうにはさらなる恐怖が待っている・・・
幼心にも葛藤がありましたが、騒いだり逃げ出したりしなかったのは、とにもかくにも虫歯が痛かったからです。
「歯医者さんに行かないと治らないよ」
そう言われた小さな私は、固い決意をもって果敢にも恐怖の歯科治療に挑んだのでありました。
思えば私、なんて聞き分けのよい、忍耐強い子どもだったのでしょう!
ほんと、えらかったわ~( *´艸`)
なんて! 再び自画自賛です(笑)
歯医者さんで大人たちを困らせることはなかった私ですが、それでもしょっちゅう虫歯が痛くなるたびに、母はとても困っていたと思います。
幼稚園の遠足で遊園地に行った時も途中で虫歯が痛み出し、鎮痛剤の持ち合わせもなくて、同行した母はさぞ困ったことでしょう。
その時はお友達のお母さんから小児用バファリンをいただくことができ、それを飲んでしのぎました。
薄いオレンジ色の粒がお菓子のように甘くて、へんに感動したことを覚えています。
いつもは歯科医院でもらった鎮痛剤か、大人用のバファリンを割って飲んでいたのだと思いますが、それが我が家流。
歯磨きも大人のミント味を私に使わせた母のやり方です(笑)
そんな合理主義に慣らされた私は、
子ども専用ってなんて素敵なの~♪(*´ω`*)
と、その時はただもうそれだけでとても満足し、痛みも忘れてしまうのでした。
気持ちがそれることがとても大事なんですね。
お薬に頼るとしても、飲んだからと言ってたちどころに痛みがなくなるというわけではありません。
私が「歯がいたいよ~」と泣いていると、いつも母はお話を聴かせてくれました。
気をそらして虫歯の痛みを忘れさせるための作戦です。
当時私のお気に入りだった『シンデレラ』はそんなときの定番でした。
状況に応じて母は、
「今日はちょっと時間がないから、短めにね」 とか、
「今日は中ぐらいのコースね」というように、いろんなバージョンを用意していました。
余裕のある時はかなりのロングバージョンで、シンデレラが継母にどんな仕打ちを受けたのか、お城に行くときのシンデレラのドレスがどんなに素敵だったか、また、お城の舞踏会やガラスの靴の持ち主探しの様子なども、かなり詳細に創作を加えて話してくれました。
ペローもグリムも真っ青!(笑) というほどのリメイクです。
おかあさんもおねえさんも、どうしてそんなにいじわるなのかしら・・・
でもしかたがないわ!
一生懸命やっていれば、きっと神様は見ていてくださるのだわ!
と健気に頑張る不遇の美少女にいつしか自分を重ね、歯の痛みを乗り越える私。
ま、歯の痛みをこらえても王子さまは来ませんけどね~(笑)
そんなわけで、私は『シンデレラ』のお話を何度聴いたことでしょう。
歯が痛む→『シンデレラ』→治るという図式がおまじないのように繰り返され、まさに条件反射を起こしていたのでしょうね。
思い込みってすごい(^^;)
ときには1回では足りず、2回3回とせがんだこともあります。
「じゃ、これで最後ね」「代わりにお歌にしようか」などと応じてくれた母。
たいへんだったことが、今は分かります。
ありがとう(*^_^*)
虫歯は辛い体験ではあったのですが、母のおかげで私にとってはやはり幸せな記憶です。
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コメント
おはようございます。
やさしいお母さまですね。素敵な方だと思います。
自分も3年くらい前にとんでもない虫歯の経験をしました。治療に何日も費やし、歯を抜いたり入れたり大変でした。なので今は月に1度点検をかねて歯医者さんへ通うようにしています。
投稿: いち | 2014年3月22日 (土) 06時31分
いちさん、コメントありがとうございます。
母には、叱られた思い出も含めて、小さいころからたくさんの思い出があります。
やはり母親はそれだけ身近な存在だということでしょうね
歯の治療、大変でしたね!
いちさんのように、症状がなくても定期的に歯科医に通うことは大切なこと。
それは分かっていても、どうしても足が遠のいてしまう私です(^^;)
投稿: さぼてんの花 | 2014年3月22日 (土) 13時57分
素敵なお母様ですねぇ

ロングバージョンのリメイク版なんてすっごく聞いてみたいです( ´艸`)プププ
気持ちがそれることで落ち着けることってありますよね。
そんな楽しいお話聞いてたらそっちに夢中になって痛みも忘れられそう。
どこか痛い時とか「痛いのとんでけ~」ってさすってもらってると、なんか楽になるような気がしたり…
なんてこともありますね。
あたしも子どもがちっちゃいころ、痛いとこに手をあてて、「はっ!!」とか言って、気で痛みを吸い取って放り投げる。
なんてインチキ治療みたいなことしてました(゚m゚*)
「全然治んない」なんて言われてましたけど(笑)
でもそばにいてかまってもらってるってだけで安心できるみたいですね
投稿: ところん | 2014年3月22日 (土) 23時54分
ところんさん、いつもコメントありがとうございます♪

痛いのとんでけ~はやりましたね、私も
子どもの痛いのがとんでってパパの脚に!
パパ「あー! なんか痛い~」
とかやって、遊びに持ち込みました。
そんなことじゃ当然治らないんですけど、
そうそう、かまってもらってるってだけで安心できるんですよね
シンデレラロングバージョンは、残念ながら内容はあまり覚えてないんですが、継母のする意地悪なんか、かなりリアルに語られて、小さいながらも「えぇ~!そんなことが
」なんてドキドキハラハラしたものです。
今度母に会ったらどんな話だったか訊いてみようかしら。
本人も覚えてないかもしれませんけど(笑)
投稿: さぼてんの花 | 2014年3月23日 (日) 22時23分
ステキなお母さまですね。
ステキなお母さまに育てられたさぼてんの花さんも
そのような母親なんでしょうね。
実は、私・・・虫歯の痛さ知らないのです。
歯が丈夫なだけが取り柄です。なんて・・・
ただ、永久歯が変な所から生えてきてしまい、
乳歯を抜く羽目に・・・子供だから麻酔もせず。
麻酔をしないで、歯を抜かれる痛さは・・・
殺される!助けて~と叫びたかったけれど、
痛さで声もだせなかったです。
一番痛い思い出です。
投稿: みきみき | 2014年3月30日 (日) 21時40分
みきみきさん、コメントありがとうございます(^^)
いえいえ、私などダメダメの母親です
昔のことを思い出すと、母のすごさが分かって到底かなわないなぁって思います。
みきみきさん、虫歯なかったんですね。



すごいー!尊敬します
でもそうですか、生え変わりの時に・・・
麻酔もしないで歯を抜いたんですか!
わ~~ こわい
私は麻酔した記憶がありますが、この注射がまた痛くてこわかった…
やっぱり歯医者さんには、通わずに済めばそれに越したことないですね
投稿: さぼてんの花 | 2014年3月31日 (月) 00時01分
痛みの記憶は、強烈に残るものだと思いますが、
それ以上のお母様の温かい思い出があって、すばらしいですね。
子どもって、いろんな痛みを訴えますが、
もう私では手に負えないと思うと、「病院に」としか言えなくなっていました。
このお話を伺って、子どもが求めていたのは、こういうことだったのだと気づきました。
痛いことは取り除いてやれなくても、痛みから来る心の不安は、取り除いてやることができるのですね〜
投稿: クー | 2014年3月31日 (月) 17時13分
クーさん、コメントありがとうございます。
今思うと、私は大切に育てられてきたんだなぁと思えます。
そのときはわからなかったですけど(笑)
子どもが痛みを訴えるときって、本当に困りますよね。
様子を見ていいことなのか、受診が必要な状態なのか、あるいは何かが不満でぐずっているだけなのか。
痛いのはわかっても、どうしてあげることもできないときもありますし。
育児アドバイザーなら、お子さんの気持ちをそのまま受け止めてあげましょう などと言うんでしょうけど、実際どうすればいいのかよくわからなかったりしますね。
こんなとき母はどうしていたっけ?と、このごろよく考えます。
身近なところにいいお手本がいたことに、最近になって気づいた私です
投稿: さぼてんの花 | 2014年3月31日 (月) 22時29分